不貞慰謝料とは
不貞慰謝料とは、配偶者が他の異性と肉体関係を持つなど、婚姻関係にある夫婦の一方が負う「貞操を守る義務」に違反する行為(不貞行為)があった場合に、それによって精神的な苦痛を受けた配偶者が請求できる損害賠償金のことです。
法律上は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・710条)として位置づけられ、離婚するかどうかにかかわらず請求することができます。
慰謝料を請求できる要件
不貞慰謝料が認められるためには、一般的に次のような事情が必要とされます。
- 配偶者と第三者との間に、性的関係を伴う不貞行為があったこと
- その不貞行為によって、婚姻関係の平穏が害され、精神的苦痛を受けたこと
- 不貞相手が、相手方に配偶者がいることを知っていた(または知り得た)こと
すでに夫婦関係が破綻していた(長期間の別居など、実質的に婚姻関係が失われていた)と認められる場合には、その後の交際について慰謝料が認められにくくなることがあります。
誰に請求できるか
不貞慰謝料は、不貞行為を行った配偶者本人だけでなく、その不貞相手に対しても請求することができます。配偶者と不貞相手は、共同で不法行為を行ったものとして、連帯して賠償責任を負うのが原則です。
そのため、配偶者と不貞相手のどちらか一方だけに請求することも、両方に請求することも可能です。ただし、慰謝料の総額としては、精神的苦痛に見合った金額が上限となるため、両方から二重に全額を受け取れるわけではありません。
慰謝料の金額を左右する事情
不貞慰謝料の金額に、法律で定められた明確な基準があるわけではありません。個別の事情を踏まえて、次のような要素が総合的に考慮されます。
| 考慮される事情 | 内容 |
|---|---|
| 不貞関係の期間・回数 | 関係が長期間・継続的であるほど、慰謝料は高額になる傾向があります。 |
| 婚姻関係への影響 | 不貞行為が原因で離婚に至った場合は、離婚に至らなかった場合より高額になりやすい傾向があります。 |
| 婚姻期間・子どもの有無 | 婚姻期間の長さや、未成年の子どもがいるかどうかも考慮されます。 |
| 不貞相手の関与の態様 | 不貞相手が積極的に関係を持ちかけたか、婚姻の事実をどの程度認識していたかなどが考慮されます。 |
| 謝罪・反省の有無 | 示談交渉における対応(謝罪の有無、関係解消の状況等)も金額に影響します。 |
請求できる期間(消滅時効)
不貞慰謝料の請求権には、消滅時効があります。民法上、不法行為による損害賠償請求権は、被害者が「損害及び加害者を知った時」から3年で時効により消滅するのが原則です(不貞行為が続いている場合は、その終了時が起算点となります)。
また、不貞行為の時から20年が経過した場合も、請求権が消滅します。時効が近づいている場合は、内容証明郵便による請求など、時効の完成を止めるための対応が必要になることがあります。
証拠について
不貞慰謝料を請求するためには、性的関係を伴う不貞行為があったことを裏付ける証拠が重要になります。一般的に、証拠として意味を持ちやすいものには、次のようなものがあります。
- ラブホテルや相手の自宅等への出入りが確認できる写真・動画
- 不貞関係をうかがわせるメール・メッセージのやり取り
- 関係を認める内容の音声・録音
- 探偵による素行調査の報告書
単なる推測や、二人で食事をしていたという程度の事実だけでは、不貞行為があったと認められない場合があります。証拠の集め方によっては、プライバシー侵害など別の問題が生じることもあるため、注意が必要です。
請求の流れ
一般的な流れ
- 証拠の収集
不貞行為を裏付ける証拠を集めます。 - 内容証明郵便の送付
相手方に対して、慰謝料を請求する意思を書面で明確に伝えます。時効の完成を防ぐ意味も持ちます。 - 示談交渉
金額や支払方法について、相手方と直接またはやり取りを重ねて交渉します。 - 合意書・示談書の作成
交渉がまとまった場合は、支払金額・方法、清算条項(今後互いに請求しないこと)などを記載した書面を作成します。 - 調停・訴訟
交渉がまとまらない場合は、裁判所の民事調停や、訴訟の提起により解決を図ります。