契約は口頭の合意だけでも成立する
多くの契約は、当事者どうしの口頭での合意だけで法律上有効に成立します。「契約書がないから、この約束には効力がない」というのは誤解であり、契約書はあくまで契約の成立要件ではありません。
それでは、なぜ契約書を作成するのでしょうか。目的は主に2つあります。1つは、口頭でのやり取りだけでは曖昧になりがちな契約内容を、書面という形で明確にすることです。もう1つは、後になって「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、将来のトラブルを防止することです。
印鑑がなくても、サインだけで有効
契約書に押印がなくても、契約書自体の効力に影響はありません。当事者の署名(サイン)だけでも、有効な契約書として成立します。
押印には、「本人が契約内容を確認し、合意したこと」を後から立証しやすくするという実務上の意味合いがありますが、法律上の必須要件ではありません。近年広がっている電子契約サービスでも、押印がない形式で問題なく運用されています。
ひな形をそのまま使うことの危険性
インターネット等で入手できる契約書のひな形(テンプレート)は、あくまで一般的な取引を想定した汎用的な内容にすぎません。自社の取引実態や、想定されるリスクに合わせて作られたものではないため、そのまま使うと、次のような問題が生じることがあります。
- 自社にとって不利な条項が、そのまま残ってしまっている
- 実際の取引内容と、契約書の条項が食い違っている
- 想定しているトラブル(納期遅延、契約解除など)に対応する条項が抜けている
- 古い法律を前提にした条項のままになっている
ひな形は「たたき台」として使うのは問題ありませんが、実際の取引内容に沿って一つひとつの条項を確認し、必要な修正を加えることが重要です。
契約内容は当事者で自由に決められる
契約の内容は、原則として当事者同士が自由に決めることができます(契約自由の原則)。どのような条件で、何を取引するか、支払方法や納期をどうするかなど、法律に反しない限り、当事者の合意によって定めることができます。
ただし、この自由には例外があります。法律の中には、当事者の合意によっても変更できない「強行規定」と呼ばれるルールがあり、これに反する契約内容は無効になります。たとえば、労働基準法や借地借家法、消費者契約法などには、契約の一方当事者(労働者、賃借人、消費者など)を保護するための強行規定が多く含まれています。契約書を作成・確認する際は、こうした強行規定に反していないかにも注意が必要です。
契約書は裁判で強力な証拠になる
万が一、取引先とのトラブルが裁判にまで発展した場合、契約書は非常に強力な証拠となります。当事者双方が署名・押印した契約書があれば、そこに書かれた内容について合意していたことを、比較的容易に立証できます。
逆に言えば、契約書の内容に不備や曖昧な点があると、いざという時にその不備がそのまま不利に働いてしまいます。契約書は、「作成すること」自体よりも、「どのような内容で作成するか」が重要です。取引の実態やリスクを踏まえ、慎重に作成・確認することをお勧めします。